
ポテンツァは本来、毛穴・ニキビ跡・ハリ不足など幅広い肌悩みに用いられる治療ですが、実は肝斑に対しても治療効果を発揮します。しかし、「本当に肝斑に効果があるの?」「悪化することはない?」と不安を感じる方も少なくありません。
このコラムでは、ポテンツァが肝斑にどのように作用するのか、悪化リスクが生じる理由、安全に治療を進めるためのポイントについて詳しく解説します。
肝斑にポテンツァは効果がある?
結論からお伝えすると、ポテンツァは肝斑治療に有効なアプローチのひとつです。ただし、その効果をしっかり引き出すためには「正しい設定で行うこと」が欠かせません。
肝斑とは
肝斑は、ホルモンバランスのゆらぎや紫外線、摩擦といった日常的な刺激がきっかけで現れる、頬骨まわりに左右対称に出やすい茶色いシミです。代表的な治療といえば、レーザートーニングやトラネキサム酸の内服が一般的でしたが、それだけでは十分に改善が見られないケースも少なくありませんでした。
そうしたなか、近年はポテンツァによる肝斑治療が注目されるようになり、肌への負担を抑えながらアプローチできる点が支持を集めています。
ポテンツァとは
ポテンツァは、マイクロニードルと高周波(RF)を組み合わせた治療で、肝斑の原因となるメラニンを作り出すメラノサイトにアプローチします。この際、肝斑専用の「Sチップ」を使用し低出力にて照射することが特徴です。このように、適切な出力設定や専用モードで施術を行えば、肝斑を悪化させずに安全に治療を進めることができます。
なぜ「ポテンツァで肝斑が悪化した」という声があるのか

ポテンツァで肝斑が悪化したという声が聞かれる背景には、いくつかの原因があります。
過度な出力設定
ポテンツァでは、高周波(RF)の出力を細かく調整しながら施術を行います。ニキビ跡や毛穴治療では、高出力でしっかり熱を加えることで効果を引き出すことがありますが、肝斑治療ではこのアプローチが逆効果になることがあります。
肝斑は「刺激にとても弱い」という特徴があり、強い熱エネルギーが加わるとメラノサイトが活性化してしまいます。その結果、メラニンの生成が増え、肝斑が濃く見える原因になることがあるのです。
針の深さが深すぎる場合
肝斑は、表皮のメラノサイトが機能異常により過剰にメラニンをつくり出すことで生じるため、表皮に近い浅い層が治療のターゲットになります。ニキビ跡や毛穴治療のように、深く針を刺してしまうと、必要以上の刺激が肌に加わり、メラノサイトが反応してしまう可能性があります。その結果、肝斑が濃く見える原因につながることもあります。
肝斑治療としてポテンツァを使う場合のポイント
肝斑を安全に改善するためには、以下のポイントを押さえた施術が必要です。
①専用モードTIPを使用

肝斑治療には、針を使わず高周波のみを届ける専用の「Sチップ」を使用します。これはポテンツァのハンドピース先端に装着するチップで、治療目的に応じて適切な種類を選ぶことが大切です。
Sチップは、赤みや肝斑などの色調変化に特化した設計となっており、肌への刺激をできるだけ抑えつつ、均一にエネルギーを届けられる点が特徴です。
②出力設定
肝斑治療では、低出力で穏やかに熱を加えることが基本になります。高出力で刺激を与えてしまうと、メラノサイトが活性化し、かえって肝斑が濃く見えてしまうリスクがあるためです。
③照射の均一性
照射の“均一性”もとても重要なポイントです。
よく、「たくさん照射したほうが効果が上がる」と誤解されがちですが、肝斑においてはこれは逆効果です。重ね打ちや密な照射は、刺激が過剰になり、悪化の原因につながることがあります。
④月1回×3〜5回が標準
肝斑治療の目安となる回数は、月に1回のペースで3〜5回ほどが一般的です。肝斑の濃さや広がり方によっては、もう少し回数を重ねたほうが良い場合もあります。
肝斑は刺激に敏感である一方、ゆっくりと反応していく性質があるため、1回の施術で劇的に変化することはほとんどありません。少しずつ薄く、均一にトーンが整っていくイメージです。
⑤併用治療(内服/外用)
ポテンツァ単独よりも、内服薬や外用薬と併用することで、さらに効果が高まります。
トラネキサム酸の内服はメラニンの生成を抑える基本的な治療で、施術と併用することで内側からもサポートできます。また、ハイドロキノンやトレチノインなどの外用薬も、メラニンを薄くする効果や代謝を上げる効果があり、併用によって治療効果をより引き出せます。
ポテンツァの肝斑治療が向いている人

向いている人
肝斑+毛穴・ハリ不足・肌質改善も同時にしたい人
ポテンツァは、複数の肌悩みを同時にケアできるのが大きな魅力です。肝斑専用治療では色味の改善を最優先に行いますが、針を用いることで毛穴の引き締めや肌質改善にも効果が期待できます。肝斑とともに肌全体の印象も整えたい方に適した治療です。
他の治療の効果に限界を感じている人
濃い肝斑は、レーザートーニングやトラネキサム酸の内服で色味が薄くなることが見込めます。しかし、その後も続けても、さらに薄くする効果を実感しにくい方もいらっしゃいます。これは、レーザーが主にメラニンに反応する仕組みであるためです。
ポテンツァによる肝斑治療は、レーザーとは異なるアプローチで行われるため、従来の治療では変化を感じにくかった方にも試していただける新しい選択肢となります。
少ない回数で治療したい人
ポテンツァは、平均で3〜5回程度の施術で満足のいく結果を得られることが多く、レーザートーニングのように10回、20回と通い続ける必要がありません。忙しい方や、通院回数をできるだけ少なくしたい方にも向いている治療です。
向いていない人
肝斑が濃い状態
肝斑が非常に濃く、表皮層までメラニンがたまっている場合は、いきなりポテンツァから始めるよりも、まずレーザートーニングで表面のメラニンを薄くしてから、ポテンツァで深い層にアプローチするほうが効果的です。
どの治療から始めるかは、医師による診断が必要です。適切な順序で施術を進めることで、安全に、より満足度の高い結果を目指せます。
妊娠中・授乳中
妊娠中や授乳中は、ホルモンバランスが変化しており、肝斑が悪化しやすい時期です。また、安全性の観点からも、この時期の美容施術は避けることが推奨されます。
症例紹介
①ポテンツァ肝斑コース3回+薬剤塗布(トラネキサム酸)3回

②ポテンツァ肝斑コース5回+薬剤塗布(トラネキサム酸)5回

肝斑の色味が薄くなることで、顔全体のトーンが明るくなり、若々しく健康的な印象になりました。赤みも落ち着き、肌全体の色調が均一になることで、透明感のある仕上がりになっています。
※個人差があり、すべての方に同じ効果が出るわけではありません。
肝斑のない透明肌をポテンツァで実現しよう
ポテンツァは、正しい方法で行えば肝斑の改善が見込める新治療と言えます。
低出力で均一に照射する専用チップを使うことで、肝斑を悪化させるリスクを抑えながら、安全にアプローチすることができます。また、肝斑だけでなく、毛穴や肌のハリなど、複数の悩みを同時に整えられるのも大きな魅力です。正しい治療を選択することで、長年気になっていた肝斑も少しずつ改善し、透明感のある明るい肌へと近づけます。安心して一歩を踏み出せる治療として、ポテンツァは頼もしい選択肢となるでしょう。
医師 渡辺 佳奈
東京慈恵会医科大学救急科を経て、都内美容皮膚科で経験を積む。
患者様が自分の素顔を好きになるお手伝いをライフワークとし、丁寧な診療を心がけている。レーザー、ドクターズコスメの知識を豊富に持ち、注入治療、外科手術も得意とする。
ポジティブエイジングとナチュラルな健康美をテーマに抗加齢学、美容皮膚科学の研鑽に励む。