
脂肪豊胸を調べていると、「石灰化」という言葉を目にすることがあります。あまり聞き慣れない言葉だけに、乳がんとの関係や、もし石灰化が見つかったらどうなるのか、気になる方もいるのではないでしょうか。脂肪豊胸後の石灰化は、多くは良性の変化ですが、乳がんに伴う石灰化との区別が必要になる場合もあります。
今回は、脂肪豊胸後に石灰化が起こる原因や見つかり方、乳がんとの違いについて詳しく解説します。
脂肪豊胸後に起こる「石灰化」とは?

まずは、石灰化がどのような状態なのか、しこりとの違いも含めて解説します。
石灰化とはカルシウムが組織に沈着した状態
石灰化とは、組織の中にカルシウムが沈着することをいいます。
脂肪豊胸では、注入した脂肪の一部がうまく定着せず、脂肪壊死を起こすことがあります。その後、壊死した脂肪や周囲の組織にカルシウムが沈着すると、石灰化として残る場合があります。ただし、脂肪壊死が起きたからといって、必ず石灰化するわけではありません。
石灰化=しこりとは限らない
石灰化と聞くと、硬いしこりができるイメージがあるかもしれません。しかし、石灰化は必ずしも手で触れて分かるものではなく、小さな石灰化であれば自覚症状がないことも珍しくありません。そのため、乳がん検診などでマンモグラフィや超音波検査を受けた際に、初めて見つかる場合もあります。
一方、脂肪壊死によるしこりに石灰化が伴い、硬さを感じるケースもあります。触診だけで石灰化の有無や原因を判断することは難しいため、気になる症状がある場合は画像検査で確認することが大切です。
なぜ脂肪豊胸で石灰化が起こるの?

脂肪豊胸後に石灰化が起こる原因について、脂肪の定着との関係から解説します。
定着しなかった脂肪が脂肪壊死を起こすことがある
脂肪豊胸では、注入した脂肪が周囲の組織から酸素や栄養を受け取り、新たな血流が確保されることで定着していきます。しかし、すべての脂肪が定着するわけではありません。十分な血流が得られなかった脂肪は、時間の経過とともに壊死することがあります。特に、一度に多くの脂肪を注入した場合や、脂肪が一か所に集中している場合は、脂肪壊死のリスクが高まります。
脂肪壊死の経過で石灰化を伴うことがある
脂肪壊死が起こると、壊死した脂肪が体内で吸収されたり、油分がたまったオイルシストや線維化した組織として残ったりすることがあります。こうした変化の過程でカルシウムが沈着すると、石灰化として画像検査で確認される場合があります。ただし、脂肪壊死が必ず石灰化につながるわけではなく、そのまま吸収されるケースもあります。
一か所への大量注入は石灰化のリスクを高めることも
脂肪を一か所にまとめて大量に注入すると、脂肪の塊の中心部まで酸素や栄養が届きにくくなります。その結果、脂肪壊死が起こり、しこりや石灰化につながる可能性があります。
脂肪豊胸では、単に注入量を増やすのではなく、脂肪を細かく分散させながら、周囲の組織から血流を得やすい状態で注入することが重要です。
脂肪豊胸後の石灰化はどの検査で分かる?

脂肪豊胸後の石灰化は、主にマンモグラフィや超音波検査などで確認します。
マンモグラフィで石灰化の形や分布を確認する
マンモグラフィは、乳房をX線で撮影する検査です。石灰化は画像上で白い点や塊として映り、その大きさや形、分布などから良性の変化が疑われるか、詳しい検査が必要かを判断します。脂肪豊胸後もマンモグラフィを受けることは可能ですが、脂肪壊死による石灰化が乳がんに伴う石灰化と紛らわしい場合もあります。
検査を受ける際は、脂肪豊胸を受けたことや施術時期を事前に伝えておきましょう。
超音波検査でしこりやオイルシストの状態を確認する
超音波(エコー)検査では、乳房の内部を画像で確認し、しこりの大きさや形、オイルシストの有無などを調べます。脂肪壊死による変化を確認する際にも役立ちますが、小さな石灰化は超音波だけでは分かりにくいことがあります。そのため、必要に応じてマンモグラフィと組み合わせて評価します。
必要に応じてMRI検査や生検を行うことも
マンモグラフィや超音波検査だけでは良性かどうか判断できない場合、MRI検査や生検を行うことがあります。MRI検査は乳房内部の状態を詳しく調べるために用いられ、生検では疑わしい部分の組織を採取して調べます。脂肪豊胸後に見つかった石灰化がすべて良性とは限らないため、画像検査で気になる所見があれば、乳腺専門医による詳しい検査が必要です。
脂肪豊胸の石灰化と乳がんの石灰化はどう違う?

脂肪豊胸後の石灰化と乳がんに伴う石灰化には、いくつかの違いがあります。
脂肪豊胸後の石灰化=乳がんではない
脂肪豊胸後に生じる石灰化の多くは、脂肪壊死に伴う良性の変化です。石灰化そのものが乳がんに変化するわけではなく、脂肪豊胸による石灰化が乳がんの発症リスクを高めるという根拠もありません。
ただし、乳がんでも石灰化が見られることがあるため、検査で石灰化を指摘された場合は、その原因を確認する必要があります。
マンモグラフィでの映り方に違いがある
脂肪壊死による石灰化と乳がんに伴う石灰化では、マンモグラフィで確認できる形や分布に違いが見られることがあります。
| 特徴 | 脂肪壊死に伴う石灰化 | 乳がんで見られる石灰化 |
| 大きさ | 細かい粒状、粗いものが多い | 細かいものの密集、大きさも不規則なことが多い |
| 形 | 丸く見えることが多い | 形が不規則で、細長いこともある |
| 広がり方 | 脂肪が壊死した部分、ところどことに散っている | 一か所に集まったり、線状に並んだりすることがある |
| 時間による変化 | 徐々に大きく、粗くなることがある | 数が増えたり、範囲が広がったりすることがある |
※これらはあくまで一般的な傾向です。脂肪壊死による石灰化でも乳がんと似た映り方をすることがあり、反対に乳がんでも典型的な特徴が見られない場合もあります。総合的な検査をもとに医師が判断します。
乳がん検診では脂肪豊胸を受けたことを伝える
乳がん検診を受ける際は、脂肪豊胸を受けたことや施術時期を、事前に医師や検査担当者へ伝えておきましょう。脂肪豊胸の既往がわかれば、脂肪壊死による変化も考慮しながら画像を評価できます。過去の検査画像がある場合は、比較することで石灰化の変化を確認できることもあります。
なお、脂肪豊胸を受けているからといって、見つかった石灰化をすべて術後の変化と考えることはできません。検診で精密検査を勧められた場合は、自己判断せず、乳腺専門医の診察を受けることが大切です。
石灰化が見つかったらどうする?
脂肪豊胸後に石灰化が見つかった場合は、検査結果や症状に応じて対応を判断します。

良性と判断された場合は経過観察になることが多い
脂肪豊胸後に石灰化が見つかっても、必ず治療が必要になるわけではありません。検査で良性と判断され、痛みやしこりなどの症状がなければ、特別な処置をせずに様子を見ることが一般的です。
経過観察が必要と判断された場合は、医師の指示に従って定期的に画像検査を受け、石灰化の形や分布に変化がないかを確認します。
しこりやオイルシストの状態によっては処置を検討する
脂肪壊死によってオイルシスト(脂肪が液状になって溜まった袋状のもの)ができた場合は、状態に応じて注射針で内容物を吸い出す「穿刺吸引」を行うことがあります。
また、しこりが大きく目立つ場合や、痛みなどの症状が続く場合には、外科的な摘出を検討することもあります。ただし、こうした処置は石灰化が見つかっただけで行うものではありません。症状や画像検査の結果をもとに、治療が必要かどうかを判断します。
胸の硬さや変化が気になる場合は医師に相談する
脂肪豊胸後に胸の一部が硬くなったり、以前とは違うしこりを感じたりした場合は、自己判断せずに医療機関へ相談しましょう。特に、しこりが大きくなる、痛みや赤みが出るなどの変化がある場合は、早めの受診が大切です。
触った感覚だけでは、石灰化や脂肪壊死による変化なのか、別の原因によるものなのかを区別できません。必要に応じて画像検査を受け、原因を確認することが大切です。
脂肪豊胸後の石灰化は適切な検査と判断が大切
脂肪豊胸後の石灰化の多くは良性の変化ですが、乳がんに伴う石灰化との区別が必要になる場合もあります。気になるしこりや硬さがある場合は、画像検査で状態を確認することが大切です。
石灰化のリスクを抑えるには、脂肪の定着を考慮した施術が重要です。NEXUSクリニックでは、不純物などを取り除いて濃縮した脂肪を使用するコンデンスリッチファット(CRF)と、脂肪を少量ずつ分散させる注入方法を採用しています。
また、当院では乳がん術後の再建手術を担当している医師が脂肪豊胸を行っています。カウンセリングでは、施術方法だけでなく、石灰化のリスクや乳がん検診への影響についても丁寧にご説明しています。脂肪豊胸を検討しているものの、術後の石灰化や乳がんとの関係が心配な方も、お気軽にご相談ください。
技術指導医 山崎 俊
形成外科医として18年、美容外科医として10年以上の豊富な経験を持ち、数多くの外科施術を手がけてきた実力派ドクター。日本形成外科学会専門医・指導医として、再建やマイクロサージャリーの分野にも精通しています。
フェイスリフト、目周りの切開手術、クマ取り、鼻手術、乳房手術など幅広い施術に対応し、形成外科で培った確かな技術と知識を美容医療に応用。常に安全性と確実性を重視した診療を行っています。
穏やかで丁寧なカウンセリングにも定評があり、多くのお客様から厚い信頼を得ています。